観客動員数についての考察

7月3日、セ・リーグは7月1日終了時点での入場者数を発表した。それによると昨年の同試合時に比べ5.9%の減少だそうである。巨人のみ前年比1.2%増、他は軒並み減少している。私の手元にはデイリースポーツ紙があるが、記事の内容はリーグから発表された内容の記載だけである。これだけでは巨人人気は不変で更に上昇しており、他球団は人気低迷に悩んでいるように見える。果たしてそうであろうか。巨人戦の視聴率が低迷していることは繰返し報道されているが、観客動員には影響がなかったのであろうか。

巨人人気は全国的であり、セ・リーグ各球団は巨人戦の入場者に頼ってきた。巨人の持つ集客力がセ・リーグ各球団を潤してきたといえる。それではビジターとしての巨人の集客力はどうなっているか。同じように7月1日時点での各球団の巨人戦の入場者数と、去年の同試合数消化時点でのそれとを比較してみよう。

対巨人戦入場者数比較
チーム 試合数 2001年 2000年 増減
中日 9 364,500 364,500 0.0%
横浜 6 180,000 175,000 2.9%
ヤクルト 6 216,000 250,000 -13.6%
広島 8 131,000 178,000 -26.4%
阪神 8 359,000 397,000 -9.6%
合計 37 1,250,500 1,364,500 -8.4%

 実に8.4%の減少となっている。これはリーグ全体の減少率、5.9%よりも悪化しているのである。では巨人主催ゲームの1.2%増とはどういうことであろうか。実は去年も今年も巨人主催ゲームはすべて満員発表なのである。なぜ増加したかといえば、去年使用した札幌円山球場が満員で25,000だったのに比べ札幌ドームでは43,000になっただけのことである。つまりすべての試合が満員であるということでは去年となんら変わっていない。

そこでもう一つ疑問がわく。果たして毎回本当に満員なのだろうか。あるいは本当に55,000人も収容できるのであろうか。巨人に限ったことではないが、いつも問題にされる『入場者の水増し』である。このことについて検証してみよう。比較するのは日本シリーズの入場者数である。これは1人単位まで発表されている。去年のONシリーズの盛り上がり様を感じた人なら、あれがほぼ満員であったといっても納得してもらえるであろう。セ・リーグ6球場と福岡ドームの去年、今年のシーズン中最多入場者数と日本シリーズにおける最多入場者数を比較し、その乖離を見てみよう。

球場 シーズン 日本シリーズ 乖離率
東京ドーム 55,000 46,342 H6.第2戦 18.7%
ナゴヤドーム 40,500 38,011 H11.第5戦 6.5%
横浜スタジアム 30,000 29,289 H10.第6戦 2.4%
明治神宮球場 45,000 35,876 H4.第2戦 25.4%
広島球場 32,000 30,442 S59.第5戦 5.1%
甲子園球場 55,000 51,554 S60.第4戦 6.7%
福岡ドーム 48,000 36,787 H12.第5戦 30.5%

日本シリーズにおける入場者数は試合による差が極めて小さく、ほぼ満員といって差支えないであろう。ちなみに過去13試合行われた東京ドームにおける日本シリーズ入場者数ワーストスリーは去年の福岡ダイエー戦の3試合であり、最小はその第1戦、入場者数は43,848人であった。球場により実数との乖離に差が見られるが、程度の差はあれども、水増し発表を続ける限り目の前にある問題点、あるいは問題の起きる兆しを見落としてしまうだろう。

実は巨人は実数発表が簡単にできることを自ら証明している。1999年と2000年に行われたサントリーカップである。交流戦のテストケースとして行われたこのカップ戦において、巨人が主催する東京ドームでの試合だけが実数発表されたのである。上記の乖離率を当てはめると入場者数を通常より2割近く少なく発表したことになる。交流戦を望むパ・リーグに対して、期待ほど観客の増加は望めないことを示す意図があったのではないかと勘ぐりたくなるが、オープン戦でさえ出来るのだから公式戦でも実数発表をしてはいかがかと思うのである。

2001/07/09


観客としての「バント」論

野球は一つ一つのプレーのアウトかセーフかの分岐を積み重ねる事により、やがて得点に至り、チームの勝敗を分ける。我々がプロ野球の試合を観戦するときに、結果としての勝敗はもちろんの事、得点経過に一喜一憂し、好プレーに拍手を送る。贔屓チームの勝ち負けだけがプロ野球観戦の楽しみであるなら、100200の勝利でも、8723転する試合でも満足度は同じであろうが、実際には点差が開けば開くほど観戦の熱中度は薄れていく。これは負けた場合を考えるとより良くわかるが、見せ場無しで一方的に負けると「負けるにしても負け方ってものがあるだろうに」と思いながら帰路につくのである。

クロスゲームでは、歓喜と落胆、希望と不安、緊張と安堵が交互に訪れ、時間の経つのを忘れさせる。そうして入場料と見合わせて、十分な満足度を得るのである。では、その歓喜と落胆の境目はどこかというと、得点シーンという事になる。従ってホームベース上のクロスプレーは緊張のピークである。ここで審判の手が上がるか広がるかによって、球場の観客は歓喜と落胆に色分けされる。この場合も点差が少なければ少ないほど歓喜と落胆の度合いが大きい。そしてゲームの終盤に向かい、勝ち負けという結論の出るときが近付くにつれ、その度合いは更に大きくなっていく。

本塁上ほどではないにしろ、クロスプレーには緊張が伴う。それはアウトかセーフかによってその後の状況が大きく変わるからであり、贔屓チームの攻撃時には、セーフになれば歓喜し、アウトになれば落胆する。これもまた得点の可能性が高いケースほど、また点差が少ないほど、終盤に近いほど歓喜と落胆の度合いが大きい。もちろん、クロスプレーでなくとも得点に歓喜し、失点に落胆し、セーフに歓喜し、アウトに落胆する。これが観客としての楽しみである。

また、観客は贔屓の選手の1シーズン、あるいはデビュー以来、更にはアマチュア時代からのドラマというものを観戦する1試合に凝縮して熱い視線を送る。特に主軸を打つほどの選手であるなら、チャンスでのヒットを、得点打を、更にはホームランを期待する。その期待に応えられたかどうかでその選手の好調さ、成長度合いを確かめて、あるいは満足し、あるいは心配し、あるいは愚痴る。例えば「あいつ、左が打てるようになったよなあ。もう堂々たる四番だよ」とか「なんであんな球に手を出すかな〜。まだクリーンアップは荷が重いか」とか愚痴とも期待ともつかない話に興じる。それもまた観戦の楽しみである。

それを踏まえて、唯一自らアウトを献上するという「バント」という作戦について考えてみる。これは最初から観客の楽しみの一部を奪っているのである。プロ野球という興行を見せて収入を得る立場の人間は、奪った楽しみに見合うだけの喜びを観客に与える義務があるということを自覚しなければいけない。観客としてはバントをして欲しくないケース、バントをして欲しくない打者というのは確実に存在する。しかしそういう作戦を多用する監督達からは観客に対する言葉は出てこない。

昭和23年、今から53年前、巨人の三番打者、青田昇は21で負けている試合の無死一、二塁のチャンスにとっさの判断でドラッグバントを決め、見事逆転へと導いた。ところがベンチに帰るなり当時の三原脩監督に頭からどやしつけられたという。青田昇氏がその著書、「サムライ達のプロ野球」で『何かといえば、すぐ三番、四番にバントを命じ、勝つためにはそれが必要だとうそぶいて、野球を小さく小さくしてしまっている現代のプロ野球監督達』に聞かせてやりたいという三原監督の言葉を引用してこの項の終りとしたい。

「お前は何を考えて野球をやってるんだ。俺はお前にバントさせるために三番を打たせてるんじゃないぞ。ファンだってそうだ。お前のバントなんか見たくはない。ホームランを見たくて来てるんだ。これからのプロ野球がそんなみみっちいことで客が呼べるか」

「君が二番や八番を打つ打者だったら、あのプレーは確かにほめられるだろう。だがベーブ・ルースがあんなことをしてファンが喜ぶか?我々はもう戦前のアマチュア野球的なカラをぶち破らなくちゃ、あかんのだ」

2001/06/19


悲しきベイスターズ

まったく怠けていると月日の経つのは早いもので、5月になってやっと今世紀初めてのコラムというのも情けないのだが、今、横浜の試合を見るのが辛いのである。それは単に弱いからという意味ではない。弱いだけなら永年の大洋―横浜ファン歴の中で今年より弱かった年は十指に余る。自慢にはならないが。

週刊ベースボール5.14号の豊田泰光氏のコラム「オレが許さん」の中で『鈴木尚のあれほど悩んでいる姿を見るのも初めてです。』という指摘があった。それをみて私の今季初観戦となった阪神―横浜戦の衝撃のシーンが思い出された。あれは一体、鈴木尚に何をもたらしたのだろうか。

今年の鈴木尚は森監督から4番固定と言われ、その期待に応えるべく、開幕7試合目、第3打席まで25打数8安打、HR1、二塁打2、打率.320と好調にスタートした。この試合まで横浜は2勝4敗、3連敗中といえども先発は実質的エースにして阪神キラー(通算20勝6敗)の三浦。開幕第二戦では8回を0封して好調をアピール。相手の阪神も苦手の三浦にエース福原を中5日でぶつけるのを避けローテ要員とはいいがたい部坂の先発。横浜は初回から得点を重ね、三浦は絶好調で5回まで1安打0封。5−0とリードして迎えた6回表無死1,2塁で鈴木尚に4回目の打席が回ってきた。ここで、送りバント。

森監督にとってはこのシーンが権藤イズムの否定のために格好の舞台と映ったのではないだろうか。前監督であれば100%採用しないであろう作戦、それを用いることで選手に自らのポリシーを浸透させるには格好の舞台。そして試合は5−2で横浜が勝利した。森監督は試合後「連敗中でなければ4番にバントはさせない」と語った。また、ナインにこのバントの必要性を改めて説明したという。図らずも弁明が必要な作戦であったことを露呈したのではないだろうか。

鈴木尚はその次の打席から続く3試合で12打数1安打。5月6日現在の成績は30試合107打数25安打、打率.234。しかもその犠打以降に放った長打は5月5日のHR1本のみ。実に81打席もの間、長打が出なかったのである。今横浜は阪神と最下位を争っている。

2001/05/09