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| シンハラ語の動詞は活用する、を学ぶ Eシンハラ語とワラナギーマ 2005-12-09 |
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シンハラ語とワラナギーマ
かしゃぐら通信2005-12-09 / 2007-Dec-24
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シンハラ語文法では動詞の活用と名詞の格変化を同じワラナギーマという用語で呼びます。コンジュゲーションcojugationとデクレンションdeclensionを併せてともにワナギーマwaranagiimaと呼ぶわけです。
シンハラ語では動詞・名詞・形容詞などおよそ総ての単語が語形変化します。およそシンハラ語の総ての言葉は形を変える言葉です。
形を変えない単語ですが、「ああ!」などの感嘆詞、接続詞、助詞の類がそこに分けられていて、これらは不変化詞と言う意味でニパータ・パダと呼ばれます。
単語を変化するもの、しないものの二通りに分ける語彙論はパーリ語にもあるのですが、ここでも変化しない言葉をニパータ・パダと呼びます。ならば、パーリ語とシンハラ語は同じ様な言語かと言えば、ぜんぜん違う。シンハラ語のニパータには助詞が含まれますがパーリ語には含まれていません。なぜなら、パーリ語に助詞はないから。加えていえばニパータと言う語彙の分類はサンスクリットに始まります。サンスクリット・パーリ語からシンハラ語が借りてきた用語です。
「シンハラ語の話し方」でシンハラ動詞を説明したとき、ワラナギーマ、ワラナギッラという用語に触れました。シンハラ動詞は活用する。その「活用」というとこばワラナギーマに当てはめました。
「シンハラ語の話し方」の中のシンハラ動詞活用一覧は日本語の動詞5段活用に準えてシンハラ動詞の活用を対応させたものです。こうしてシンハラ語の動詞変化を覚えると無理がない。
シンハラ語を学ぶ日本人がワラナギーマという用語を知らされずにシンハラ動詞を学んでいるとしたら、どんなに不便なことでしょう。
ディサーナーヤカはシンハラ動詞のワラナギーマを屈折的な活用と考えたのでしょうが、彼が解析したシンハラ動詞の姿は日本語動詞の仕組みそのものです。日本人にとってそれは、学校文法の動詞活用と眼に映る。つまり、ワラナギーマは日本語の動詞活用を視座に入れて理解しても、りっぱに文法用語として働けるのです。
AL全国共通試験用のシンハラ語学習参考書に現れるワラナギーマの説明を読んでみましょう。
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yn[@vn\ h#Q]n\@v|. s]Ahl x`S`@vh] @mm vrn#g}m|, n`m sh kY]y` vrn#g}m| yn[@vn\
pYE`n @k`ts\ @qkk].v]xjn pYw&y @p`q[@v| vrn#g}@m| pYw&y @ls]n\
q h#Q]n\@vy]. // db|.es\ kr#N`w]lk 2004 ,s}m`sh]w a#m|.d}. gON@s\n sh sm`gm |
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語幹に個別の語尾を添えることで作られる単語の諸形をワラナギーマと呼ぶ。シンハラ語にはこのワラナギーマが名詞と動詞のワラナギーマの二つに大別される。個別の接尾語(活用語尾)は総じてワラナギーマの接尾語としても扱われる。 /「シンハラ語文法」 W.S.カルナティラカ著 2004 M.D.グナセーナ社刊 |
「個別の接尾語」は「活用語」に、「単語の諸形」は「活用形」に言い換えることができます。ワラナギーマはやはり、「活用」のことなのです。
しかし、上の説明だけでは、まだワラナギーマがはっきりと見えてきません。このワラナギーマの説明から、ディサーナーヤカのように動詞は派生文法風に活用すると話を進めて行くこともできるし、また、逆にシンハラ文語文法の古典的な屈折語動詞変化へと話を進めて行くこともできるからです。皆さんはワラナギーマが古典的なシンハラ文語世界に組み込まれていることにお気づきでしょう。
受験参考書「シンハラ語文法」はワラナギーマを解説すると古典文語文法へと話を進めていきます。日本のシンハラ語教本が語る動詞規則はこの古典文語規則です。受験用シンハラ語の知識です。シンハラ語教本が「使えない」とシンハラ語を話したい日本人が苦情を申し立てるわけはそこにあります。
文語文法ではシンハラ語が話せない。日常のシンハラ語会話に14世紀のシダットサンガラーや近代クマーラトゥンガ文法はいらない。スリランカの大学入学共通試験でシンハラ語を選択したなら別だけど。
ワラナギーマは単語をつなぐ「にかわ」
シンハラ名詞の格は「名詞+ニパータ」というかたち、日本語で言えば「名詞+助詞」で表されます。これは名詞そのものの語形変化ではありません。しかし、シンハラ文語文法は「名詞+ニパータ」の語形をひとまとまりとして捉え、その語形変化をワラナギーマと呼びます。「単語の屈折」です。
シンハラ語の名詞は単数・複数で語形が変わります。大部分は名詞の語尾の1音節を付け替えることで単数・複数の別が表されます。また、日本語のように名詞語尾に「ラ-」を付けて複数を表す単語もあります。こうした語形変化もワラナギーマです。
「オバ(あなた/二人称)」に複数を表す助詞の「ラー」をつけて「オバラー(あなたたち/君等)」という複数を表す。これって、屈折、それとも膠着。とにかく、日本語の名詞の複数形の作り方と同じだと言うことは分かる。
シンハラ語のニパータ・パダに助詞の一群が含まれていると先に言いました。ここに格助詞もあります。「私の」「私を」「私に」などの言い回しは「マゲー」「マーワ」「マタ」になります。「私」が「マ」で、そこに助詞の「の/を/に」と対応するニパータの「ゲー/ワ/タ」がつくと属格・対格・与格が表せる。これって、日本語の格の作り方のままです。おまけに属格のニパータは日本語の古語の「が」にそっくり。対格・与格の助詞とニパータも相互に対応することは「シンハラ語の話し方」や「熱帯語の記憶」で既にお話しました。
動詞のワラナギーマもニパータが深く関わって動詞の態を作ることは既にお話しました。
態は動詞の活用形で表現される。活用の捉え方ですが、シンハラ語と日本語の動詞では最初のところでかなりはっきりとちがいます。日本語の学校文法では動詞活用を即座に未然・連用・終止・連体・仮定・命令と分けてしまいます。これがシンハラ語だと動詞はまず二種に大別されます。動詞はまず、終止形と非終止形とに分けられるのです。
また、始まったか。そう思われる方もおられるでしょう。語彙の分類のときも、まずは二つに分けると言う、あの方法をここでも取るのです。単語は、変化する言葉、変化しない言葉の二つに分けられる。白黒はっきりさせると言うか、どうしても物事を二つに分けたい文化を持っているかのようです。
動詞はその形態から、まずは終止形。非終止形に分ける。その先はちょっと込み入ってくるので、「見る」の活用を例にあげた下表をご覧ください。この表はW.S.カルナティラカの「シンハラ語文法」に本文として書かれた内容をまとめたものです。
| 見る balanavaa | blnv` bala-navaa |
語幹 | bl- bala- |
| 動詞活用 kriyaa varanagiima |
終止形 samaapaka |
終止形(時制) thraikaalika kriyaa |
現在時制 warthamaana varanagiima |
blm] bala-mi |
| 未来時制 anaagatha kaala varanagiima |
bln\@nm] bala-nne-mi |
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| 過去時制 athiitha kaala varanagiima |
b#l[v` baelu-vaa |
|||
| 使役形 widi kriyaa varanagiima |
blvnv` ala-va-navaa |
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| 願望形 aassiirwaada kriyaa |
blm]v` bala-mi-vaa |
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| 非終止形 asamaapaka |
連体形 krdantha |
現在時制 warthamaana krdantha |
bln bala-na- |
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| 現在時制動名詞形 bhaava krdantha |
bln[ bala-nu- |
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| 過去時制 athiitha krdantha |
b#l[ baelu- |
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| 受動 karmakaaraka krdantha |
b#l]y baeli-ya- |
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| 完了形 puurwa kriyaa |
bl` balaa- |
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| 複合動詞(繰り返し) missra kriyaa |
bl bl` bala balaa- |
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| 仮定・条件形 asambhaavya kriyaa |
blw\ bala-th- |
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動詞はその活用の仕方から終止形と非終止形に大別される。終止形は時制(現在・未来・過去)と二つの態(使役・願望)に分け、非終止形は連体形(三時制と受動)、過去形、二つの態(繰り返し、仮定・条件)分けます。
この表では文語シンハラの動詞を扱っているので時制の場合などは例示した語形のほかに人称別の語形がいくつも現れます。活用の全体は日本語の学校文法で表される動詞活用表のように統語の形式と態とで分類をしています。
ただ、決定的な欠点があるのは動詞活用の規則に言及がなされていない点です。そこに穴が開いてる。ディサーナーヤカが行った動詞活用分析はその穴を埋めようとした努力の賜物だったのです。そしてその努力は、シンハラ語動詞の活用を日本語動詞の活用と同じように捕らえると言う成果を、偶然か、また、必然か、もたらしてしまうのです。
表には日本式学校文法が言う動詞の五つの活用の内、未然形を外した4活用も含まれています。非終止形の中の過去形は通常の過去形と同形です。
上の表には「打消し」が抜けている。五段活用で言えば未然形がないのだ。シンハラ語の未然形がなぜここに含まれないのか。打ち消し表現は当然にあるのだから変だと思うだろう。シンハラ語では打ち消し表現が強調話法と同じ統語法を取るのだけど、そのことと関係があるのだと思う。動詞活用の表は総ての動詞活用を含んでいないのだ。
シンハラ文は基本的に動詞終止形だけで成立します。より高度な表現をするには動詞終止形を活用させて(ワラナギナワ)、ニパータ・パダをつけて、受動態や使役態を作ります。シンハラ語のもっともシンハラ語的な表現では主語を必要としないのですが、主語となる名詞にニパータ・パダの「タ」をつけて無意思という態を作ることもあります。無意思文には無意志動詞というシンハラ語に特有な形の動詞を使いますが、そのことは「皿を割れたとなぜ言える」でご紹介しています。
名詞。動詞。ニパータ・パダ。
これら三つの言葉をつなげるのがワラナギーマという膠(にかわ)の存在。
シンハラ語は煉れば煉るほどやわらかになります。
(了)
●ニパータは次回の短期連載で特集。
●言語は民族の誇りと深く関係する。シンハラ語は屈折語VS膠着語という確執を常に抱えていて、その自負と品格を守るためにいつでも孤立しなくてはならない状況を、自ら作り出している。スリランカではシンハラ語が屈折語、タミル語が膠着語という言語の住み分けが実しやかに語られている。言語に担わされた民族対立の影はどす黒い。
日本語の使用者がシンハラ語を扱う場合、この対峙に組する理由などどこにもないと思う。シンハラ語とタミル語が相互に関係しあう言語であることはシンハラ語を学ぶだけでもある程度理解できてくる。→「シンハラ語質問箱」のNo32でこの件に触れている。
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