トピックス

セルフクリーニング
超親水性と曇らない鏡
Grätzel太陽電池(色素増感太陽電池)
可視光で働く酸化チタン光触媒


セルフクリーニング  

 酸化チタンは酸素があると非常に強い光酸化力を示す。表面に吸着している有機物はこの光酸化力によって水と炭酸ガスにまで酸化されてしまう。大気中から器物に吸着する汚れはほとんどは有機化合物であり、その量もそれほど多くない。窓ガラスに酸化チタンを薄くコーティングすると、ほとんど透明な膜となるが、太陽光中の紫外線を吸収して光酸化反応が起こり、その表面は常に清浄な状態に保たれる。窓ガラスが自分自身でクリーニングしていることになるのでセルフ(自己)クリーニングと呼ばれる。汚れの量が少なければ室内の蛍光灯の光でもセルフクリーニングを行うことができる。ガラスコップに酸化チタンをコーティングしたセルフクリーニングコップが市販されている(写真1)。しかしながら、台所のように汚れがひどい場所でのセルフクリーニングは期待できない。
写真1 セルフクリーニンググラス
セルフクリーニング


超親水性と曇らない鏡 

 湯気で鏡が曇るのは表面に小さな水滴がびっしりと付くためである。曇っている鏡に水をかけると見えるようになることからわかるように、水が水滴とならずに水膜となれば鏡は曇らない。酸化チタンの表面を光照射すると、水の吸着が促進されることが見出されており、これにより超親水性という機能が発現する。鏡の表面に薄く酸化チタンをコーティングすると、表面の汚れが光酸化で取れるとともに、水の接触角が非常に小さくなる。その結果、鏡に吸着した水は水滴を作ることなく表面全面をぬらすことになり、鏡は曇らなくなる。これを応用した透明フィルムが市販されており、自動車のバックミラーに張り付けると曇らなくなる(写真2)。超親水性はまた、光触媒表面に付着した油汚れを浮き上がらせて水に流れやすくする。建物外壁、テント、自動車などにTiO2をコーティングすると汚れを防ぐことができる。
写真2 曇らないサイドミラー
曇らない鏡


グレッツェル太陽電池(Grätzel cell)
(色素増感太陽電池)

 新しいタイプの太陽電池がスイスのGrätzel教授らによって開発され、ひろく研究が行われている。この電池は多孔質の酸化チタン薄膜に太陽光を吸収する色素を吸着させた電極と対極の白金電極から構成される、一種の湿式太陽電池である。色素の中には可視光を吸収して光触媒として働くものがあり、さらに、太陽光によって発電ができる可能性のある色素も多い。しかし、色素に光照射するだけでは光励起状態がすぐに緩和するために電気は取り出せない。
 半導体表面の電荷分離機能と色素を組み合わせる、太陽電池のアイデアは古くからあったが効率はきわめて低かった。Grätzel教授らは大表面積の多孔質酸化チタン膜を用いることで色素の吸着量を飛躍的に増大させることによって効率を大きく向上させることに成功した。簡単な構造なので安価に太陽電池が作れる可能性がある。詳しい解説が以下のHPにある。なお、Sol Ideasの方のHPには日本語で簡単な作り方が書いてある。

http://dcwww.epfl.ch/icp/ICP-2/solarcellE.html
http://www.solideas.com/solrcell/cellkit.html

写真3 ブラックベリーの色素を使ったGrätzel太陽電池


可視光で働く酸化チタン光触媒

 現在、光触媒として使われているTiO2は光触媒活性は高いが紫外光しか吸収しないので太陽光では使えない。TiO2を可視光でも働くように改質する試みはすでに30年以上前から行われている。もっとも一般的なのは、Ti以外の金属を入れ込む(ドーピングする)方法である。この方法では、吸収波長端が長波長側に広がって可視光応答性はでるが、紫外光領域の反応収率が低下するので実用化されることはなかった。
 最近、TiO2に窒素をドーピングすることで可視光応答性を持たせることが流行っている。ドーピングの方法には湿式法、アンモニア処理法、窒素中スパッタリング法がある。このうちの湿式法は15年以上前に筆者がすでに報告している。いずれの方法でも可視光域の吸収を100%近くにすることは難しい。また、ドーピングをしすぎると光触媒活性が低下する。最近、われわれは湿式法でドープしたTiO2粉末の光酸化活性を測定した結果、ドーピングにより紫外光域の活性が少し低下することを見出している。しかし、可視光域ではWO3など可視光を吸収する半導体よりも光酸化活性は高いので実用化できる可能性はある。TiNやTa3N5などの窒化物を酸化したオキシナイトライドが可視光触媒活性を示すことも報告されている。窒素ドーピングと同様のメカニズムである可能性がある。その他、TiO2を水素中でプラズマ処理することによる可視光応答化が報告されているが、メカニズムは不明である。可視光応答光触媒についてこれからの研究の発展が期待される。
写真4 純粋なTiO2(左)と窒素ドーピングしたTiO2(右)


以下、随時更新

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