| オリジナル小説「サモサ先輩」 |
■緑王
■サモサ先輩 あしのすね毛を鎌でつーっと剃ってみた。 面白いほどよく剃れる。 「サージ。おまえ、何やっているんだ?」 「えっ?」 声のする方をふりかえると、後ろから大またで歩み寄ってくる広報部部長で先輩でもあるサモサの姿があった。 最近入所したばかりのフランネルも一緒だ。 こいつは広報部員たちに可愛がられている愛称「おちびちゃん」。 「見りゃわかるでしょ。すね毛処理ですって。 サモサ先輩のおみ脚も剃ってさしあげましょうか。ホラッ」 サモサの腰元に組みつき、道衣のすそをまくりあげようとする仕草をしてみたが、勢いがつきすぎて彼を押し倒すハメになってしまった。 男を襲ってもね、って愚痴るが協会内は男所帯。しゃれにもならない。 しかも美顔で知られるサモサとあっちゃ。 「いて〜、尻もちついちまったじゃないか」 目をあげると、腰に手をあてるサモサの足元が丸見えだ。 「あれ、先輩…」 ホントにビッコなんだ、と。 うっかり口をすべらせてしまいそうな自分に腹が立つ。 いつだったか、級友のモリスからサモサの義足について聞かされたことがある。 幼い頃、怪我がもとで化膿した箇所が壊死。その後、左膝下からごっそり足を切断したのだそうだ。 それ以来、ヤツの左膝下は義足と仲良しなんだ。 とにかくだ、そのことには触れず、 「あれれ〜、どうしたんですか。サモサ先輩。 今さらながら男前のオレさまに見惚れちゃったのかな〜?」 顔をつきあわせる結果となってしまったサモサと気まずくなりそうな空気をサラリとかわしてみた。 「何を云っているのかな、サージくん。 俺たち3人は、午後から食料の買出し当番だと念を押しておいたじゃないか。 なのに、いつまでたってもお前さまが現れないんじゃ、お迎えにあがらないわけにはいくまい?」 サモサがすっくと立ち上がり、義足のことなど何食わぬ顔で、道衣についた土をササッと両手で払った。 なんだ、こいつ。義足を見られてもビクともしないじゃん。心配して損した。 「おーっと、すまない。すね毛処理に夢中で大事なことを忘れていましたヨ」 そうだった。今日は、朝から園庭の草刈に借りだされていて忙しかったんだ。 この暑さで協会内のあちこちにはえた雑草の処理を見習い魔導師たちが総出であたることになっていた。 仲間より一足はやく一仕事終えたオレは、自分のすね毛処理に没頭してしまったのだ。 買出し当番は、昼メシが外で食べられる唯一の楽しみな時間でもある。 オレとしたことが忘れていました。 「すね毛もキレイに刈りあがりましたし。よし、行くとしますかサモサ先輩」 起き上がると、足早に協会の門へ向かう。 「おまえねぇ〜〜〜っ、待たされた俺たちの気持ちを少しはくみとれって」 二人の絡みあう姿を、頬を染めておろおろと見つめていたフランネルも、思い出したようにウンウンとうなづいた。 よくよく観察してみると、オレと足並みを揃えているはずのサモサの歩くリズムが一定ではないことに気づかされる。 さらにだ。サモサとフランネルの移動リズムがどうやらワンセットになっている。 背の低いおちびちゃんの歩幅を調整するように、先輩のサモサが気配りしているらしい。 おいっ、オレってどうしてこうも鈍感なんだ? 今まで一緒に行動していて気づかなかったのか。 「何をおっしゃっているやら。オレは、あんたたち二人のお邪魔虫になりたくなかっただけさ」 「!」 おやっ、このおちびちゃんときたら耳まで真っ赤にしているじゃないの。 オレの云ったことは、まんざら的外れじゃなかったってことか。 その様子に気づかず、サモサが鎌で器用に剃りあげられたオレの脚をのぞきこんでいる。 こいつ、オレより鈍感かも。 「サージ、育ち盛りのおまえが丈の合わない道衣をまとっている姿って、お茶目だな」 そして、あんたはフランネルにまとわりつかれている。 「大きなお世話ですよ。協会から1年に1回衣を支給されるだけでも有難いんですって」 いや、サモサの場合は、ニヤけた顔に誰もが騙されちまうんだ。 あんたこそお茶目なヤツだ。 ---------------------------THE END |