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オリジナル小説「パートナー」
■緑王 

■パートナー

「また失敗してらぁ」
 ふだんの何気ない一言が、相手の心奥底を傷つけえぐりとる。
 言葉が凶器へと変貌(へんぼう)する。
 上級クラス魔道試験を目前にひかえ、仲間の失敗を罵(ののし)ることば。
 背中越しに投げかけられた嘲(あざけ)りのことばを、本人は気にしつつもひたすら呪文に熱中しようとしている。
 彼の指先がわずかに震えていたのを今でも覚えている。
 間をあけずゲイル教官がその弟子達に一瞥(いちべつ)し、ひょろりと背高な見習い魔道師のもとへ近づいていったのだ。


 血が泡立つ。
 吐き出してしまわないと押しつぶされそうな、そんな感じだ。
 人間の根深い嫉妬心はどこまでもどろどろしている。
 際限がない。
 だからかな、日常の人間関係の面がみょうに冷めている。
 八方美人にはなりたくない。
 へんに頼られるのはこりごり。
 ちょうど、あいつがそんな感じ。
 僕と似ている面をみつける。
 惹かれる。
 どんどんひかれる。


 緊張しているらしい相手の瞳をみつめ微笑みかけた。
「やぁ、いらっしゃい。君が新しい相棒君だね。
 ぼくはトマリ・ボルガノフ」
 僕の顔をまじまじのぞく彼の口元がかすかにゆるんだ。
 見た目ひょろりと背高なこの新顔くんは、いかにも人なつっこそうなタイプだ。
 僕を歓迎してくれるかしら?
 僕は、
 君を歓迎するよ。
 握手しよう。君から手を差しのべて…
「おれはサージ・ポトフ。よろしく」
 快活そうな彼の声が部屋に響く。
 願いどおり差しだされた手に想いをのせ握りかえしてあげた。


「君の姿、よく教室で見かけていたんだよ」
 ハッ
 サージが息をのんだ瞬間を僕は見逃さなかった。
 照れ笑いを浮かべ彼はこう云った。
「良いパートナーになれそうだ」
 次に息をのんだのは僕だった。
 言葉を選びながら僕はこう返した。
「そうだね」


 きょうから僕たちはパートナーさ。
 ありがとう。



---------------------------THE END




掲示板 2002.5/20掲載分を収録

■あとがき
このおはなしは、オリジナルでございます。

今回の関連作品は「魔道試験」です。
上記作品からお読みいただけると、
よりいっそう本編をお楽しみいただけるストーリー編成となっております。
サージの立場をトマリ側から表現してみました。



緑王