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オリジナル小説「魔道試験」
■緑王 

■魔道試験

 習いたての呪文をそらんじてみる。
 この時点では、呪文の効力はない。
 もう一度、思いをのせ呪文を唱える。
 今度は効力が発揮されるはずだ。
 だが、何も起きない。
「ちっ、どこかしくじっちまったかな」
 仲間を意識するサージの表情に焦りの色合いが増す。
 聖魔道師協会内では魔道試験を直前にひかえ、見習い魔道師たちが浮き足立っていた。
 サージも例外ではない。
 教室の片隅で呪文と奮闘中の姿がゲイル教官の目にとまった。
「呪文が一カ所抜けているだけだ。苦戦しているようだなサージ」
「まぁね」
 ミスを指摘され、思い当たる呪文をおさらいしてみた。
「呪文は言葉の集合体にすぎないが、片言の呪文が抜けただけで魔法としての効力は失われてゆく。
 意識を言葉に集中し、身近に感じることが大事だ」
「わかってんだけどね〜、それができないから練習してんですよぉッ!」
 情けないサージの苦笑いがこぼれた。


「多くの者は自分が生まれた意味を知ろうとするものだ。
 サージ、お前は何のため自分がこの世に存在するか考えたことはないか?」
 両手を頭の後ろでくみ背筋を大きくのばしてみる。
「いや、楽しけりゃそれにこしたことはないが…うーん、おれにはわかんねぇ」
「自分が他人から必要とされていると感じたことは?」
「へっ?」
「先程から柱のかげで待ちわびている者に気づかなかったか」
 ゲイルに促され後ろを振りかえると柱の隅から栗毛色の頭がひょこっと顔をだした。
「あぶり出されたような登場のしかただな」
 皮肉ったつもりはない。
「ごめん、のぞき見するつもりはなかったんだけど」
 申し訳なさそうな上目遣いでサージの顔色を窺うモリスが愛想笑いをうかべ近づいてきた。
 ひとあしはやく上級クラス試験を合格し相部屋からでていった彼は、魔道試験を受けるサージを常に影から応援していたのだ。


 おれは心強い元パートナーの援助もあり、無事上級クラスへと昇格した。
 試験終了後、新たな部屋割り編成が組まれ新規の部屋へ移動となった。
「ここがおれの部屋か…」
 ノックしようとこぶしをドアに近づけた時、「どうぞ」と中から新しい相方の声が聞こえた。新鮮な緊張感。
 ドアノブを握る手に力がこもる。
 ガチャッ
「やぁ、いらっしゃい。君が新しい相棒君だね。ぼくはトマリ・ボルガノフ」
 にこやかな笑顔に迎えられサージの表情もゆるむ。
「おれはサージ・ポトフ。よろしく」
 重い荷物から開放されたばかりの右手を彼に差しだした。
 指に食い込んでいた荷物の跡がジンジンする。
 そこへ温かな手のぬくもりが伝わってきた。



---------------------------THE END




掲示板 2002.4/25掲載分を収録

■あとがき
今回のおはなしは、オリジナルでございます。
小説コーナーの「見習い魔道師」「夢追人/ゲイルの回想」にて
登場するキャラクターを元に、あたらしく創った作品でする。
読み切りではありますが、上記の作品もお読みいただけるとより深く堪能?
できますです。はい。

また、連作として「パートナー」も執筆しております。
こちらは立場を変えトマリの視点からサージを見つめたストーリー編成です。
そちらも併せてどぉぞ\(^_^)/


緑王