| オリジナル小説「飛翔」 |
■緑王
■飛翔 モルグはウルグロア侯爵に深々とお辞儀をすると、謁見の間を退出した。 「おや、ラース殿いかがなされました? 廊かで立ち話も何ですので、 散歩道(プロムナード)を散策しながらお話をうかがいましょう」 少年は眉をひきしめこくりと頷いた。 「父上は聖剣のことがなければ聖魔道師協会への援助を断ち切っていたかもしれない。 モルグはそれでも聖剣を管理しなくてはならないの?」 「確かに地方に散っている聖剣を回収し、 聖魔道師協会で一括管理すれば私どもの労力も削減できるでしょう… それでは、聖剣を扱える誠の聖剣士を育むことはできませぬ」 「聖剣士?」 「さようでございます。 聖剣士とは選ばれし者、 すなわち聖剣に宿る力を引きだせる能力を持ちあわせた者達のことです」 「でもモルグは聖剣管理を目的としてウルグロア家に来てるんじゃ…」 「勿論、管理するのは聖魔道師協会の役目でございますゆえ …そうしておりますが、実の目的は聖剣士育成」 「聖剣には一体どのような力が秘められているの?」 手入れのいきとどいた少年の金髪がゆるいウェーブを描き肩へと滑りおちている。 扉の前に立っている少年の真摯な瞳がモルグの視線をとらえた。 黒装束をまとった魔道師を歓迎するのは、この少年くらいかもしれない… モルグの口元に緩やかな笑みがのぼる。 「ラース殿、それを知りとうございまするか? ならば、魔道を究(きわ)めなさい。 魔道を深く知ることです。 そうすれば、おのずと先がみえてまいりましょう」 「先がみえる?」 『先がみえる』 ラースの意識がふと、空たかく舞いあがった。 天空でなんども旋回した言葉は、 やがてゆっくり静かな響きを残しながらラースの心に深く刻みこまれていった。 ---------------------------THE END |