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オリジナル小説「アドラ教官」
■緑王 

■アドラ教官

 聖魔導師協会広報部部室


「ねぇ、時空移動している時ってどんな気分?
 例えば雲の上や土の中も…移動できるのかな?」


 いやはや、おちびちゃんらしい考え方だ。
 時空移動の講義を受けられるのは中級クラスからだ。
 初級クラスと中級クラスがペアで行う実地訓練を目前に参加すらしていないこいつには、なおさら好奇心がわくのもやむをえまい。
「あははは。魔道を覚えるのに屁理屈はいらないのさ」
 口をとがらせたフランネルが、ブロンド巻き毛をくるくる指にからませつつ抗議の瞳をサモサへと向ける。


 広報部部室でこんな会話のやりとりをしているのは、初級クラス広報部員のフランネルと上級クラスで広報部部長を担当しているサモサだ。


 そこへ仲間の上級見習い魔道師が息せき切って駆けこんできた。
 バタバタバタッ!
 バタンッ!
「おい、サモサ。ニュースだ」
「何だよ、ニック」
「ゲイル教官がアドラ教官をやりこめた話は耳にしたか?」
「へぇ〜、あのアドラ教官をかぁ?
 そいつぁすげぇ。弟子達の間じゃずいぶんと悪名高い教官だからなぁ。」
「アドラ教官って?」
 聖魔導師協会に入門したばかりのフランネルにとっては、聴きなれないことばすべてに素朴な疑問が生じるのだろう。
「ああ、おまえのとこは教えてくれる教官がちがうんだっけ。
 アドラ教官ってのは、実技試験を担当しているおいぼれエロおやじのことさ」
「え? エロ?」
 戸惑うフランネルお坊ちゃんを横目にニックがサモサのことばを継ぐ。
「何でも目につけた弟子を個室へ呼んで個人指導するんだと!
 何を指導するんだか。
 呼ばれる弟子は決まっておつむの弱い下級クラスの可愛い子ちゃんたちだ…
 うひゃあ〜〜、口にするのもおぞましぃ〜」


「ロストの粉をちょちょっと使っているのさ。
 補習授業とか何とかいいくるめて体裁を取り繕っておき、面目程度の補習を指導してからやりこめるのさ。
 ことが終わった後にゃ、その部分の記憶はきれいさっぱり消されているってことだ」
 今ここで聞いた会話こそ、記憶から消し去って欲しいものだとフランネルは壁を背に木製のイスにへたりこんでしまった。


「げげっ、それじゃあ職権乱用じゃないか」
「ロストの粉を無断使用しているってことだろ。無理さ。
 アドラは医療部とも密接に関わっているらしいんだ。
 医療部は薬草の栽培・加工・管理全てに携わっている。
 アドラは出入り自由な立場を十二分に活用しているわけだ。
 死傷沙汰にでもならない限りは教官達も見てみぬふりさ。
 もっとも、身寄りのない弟子達が多く在籍する聖魔導師協会のことだ。
 処分されるのは、もの云わぬ亡き骸だけってこともありうるぜ」


「背筋のぞっとする話だな。そいつを知っていてゲイル教官がアドラ教官を辱めたわけだろ?
 このままで終わるのかな」
「さぁな、そればかりはアドラのみぞ知る、だ」





---------------------------THE END




2009.8.24

■あとがき
このおはなしは、オリジナルでございます。
アドラ教官の登場する作品に「昼下がり」があります。


アドラ教官の悪行を広報部でうわさしあっている。
と、そんなシチュエーションでしょうか。


緑王